2014年1月14日火曜日

DUCATIのレーシングバイクに搭載の可変フォークオフセットの解説(その2)

その1からの続きです。
直接ここに飛んできた人は、まずこちらを先に御覧ください。
DUCATIのレーシングバイクに搭載の可変フォークオフセットの解説(その1)



749Rの様に、偏心カラーでは2箇所にしかフォークオフセットが設定できないのですが、916Racingに採用された可変フォークオフセットシステムは、25~31mmまで連続して可変できる非常に凝った作りになっています。

構成図と構成部品は上記のとおりなのですが、これだけ見てもなんだかわからないですよね。
簡単に説明すると、偏心カラーが2重になっているということなんです。

でもわからないと思うので、もう少しわかりやすい解説を作ってみました。
(自分の理解のために作ったのではありますが…)

6番は、キャスタアングルを変更するようのカセットなので、フォークオフセットの可変には関係ありません。これは、市販の916~999に付いているものと基本的に同じです。

このシステムのキモは8と9番の部品です。
それぞれのパーツが1.5mm偏心しています。

これを組み合わせることによって、25~31mmのオフセットが変更できます。(実際には連続的に変更できますが、細かい調整が必要なので0.5mm単位で調整するように目盛りが用意されています。)

まずは計算上の数値








わかりにくいかもしれませんが、エクセル上で数値のシミュレーションです。

例えば、今フォークオフセットを26mmに合わせたいとします。
上下フォークブラケットは、28mmのオフセットで作ってあります。

ステムシャフト⑨を48.3°回転させます。そうすると前後方向は1.0mmオフセットが少なくなる方向に移動しますが、横にも1.12mmずれてしまいます。なので、オフセットカラー⑧を反対方向に48.3°回転させると、前後方向に更に1.0mm、左右方向はステムシャフト⑨で移動した方向とは反対に1.12mm移動し相殺されます。
トータルで見ると、28mmのオフセットから2mm短くなります。

こうすることによって、フォークオフセットが可変します。下図も参照













フォークオフセットを28mmから増やしたい場合は、反対にすればよいのです。

実際の調整はこんなかんじで行います。



こんな感じで、ご理解いただけましたでしょうか?

ご意見、ご質問などはtwitterでもお気軽にどうぞ
@DUCATI_MANIAX

DUCATIのレーシングバイクに搭載の可変フォークオフセットの解説(その1)

DUCATIの市販レーサー、◯◯Racingとか◯◯RSとかいう名称のバイクには、1997の916Racing以降、1198RSまでに標準装備されています。

これは、トレール変更を狙ったもので、フォークオフセットが25~31mmまで連続的に変化することによって、トレール量が96.6~109.2mmまで変化させることが出来ます。

これはキャスタ角とは異なるもので、フォークオフセットとトレール量の関係は以下の図の通りです。(キャスタ角を変えてもトレール量は変化しますが、今回はとりあえず置いておきます。)

一番簡単なパターンから見ていこうと思いますが、749Rには実は可変オフセット機構がついています。(市販車では変更できないようになっていますが)

916~1198までのDUCATIのスーパーバイクは、すべての車両でフォークオフセットが36mmになっています。
ですが、レースで使用するためには36mmのフォークオフセットはあまり適していません。SBKであれば、ステム周りをまるごと交換してしまうので問題がありませんが、スーパースポーツに参戦していた749Rでは最初からシステムが組み込まれています。



















アンダーブラケット/アッパーブラケットは33mmのオフセットで作ってあり、中のオフセットカラー(上図の赤色)が3mm偏心しています。
この偏心カラーを、前後2ポジションにセットすると、それぞれ 33+3=36mmと 33-3=30mmの両方が選択できるのです。

上図の解説は、キャスタの変更も合わせて書かれているのでちょっと複雑ですが…

ただし、749Rのこの機能はハンドル切れ角も合わせて規制しないとラジエターとか周辺パーツにぶつかるので、市販車の状態では使用できないようになっています。
ステアリングストッパーが別部品なのはそのためです。


その2に続く…
DUCATIのレーシングバイクに搭載の可変フォークオフセットの解説(その2)